握手という劇薬

そんなこんなでイベントに来た私は、現実感を手放したまま各出演者の方々とひとりずつ握手をし、言葉を交わし、ツーショットやグループショットを撮りました。ハグはなくて、内心死ぬほどほっとしました。
 
レポではないのでさっくり書きましたが、このたった3行の間に私の中にどれだけの感情が生まれ、あふれ、そしてせめぎあい淘汰され咆哮をあげたことか。
 
それをこれから、紐解いていこうと思います。
 
このイベントに参加するにあたり、やはり私が一番気にしたのが「こちらに視線が向く」ということです。
理由は、一方的に観察していたい性質なためと、もう一つは自分に自信がまるっきりないため。
それは容姿ももちろんですが、嗜好や挙動、表現方法についてもです。
私はこれまで、自分の好きなものをほかの人と共有しようとか、布教しようとか考えずに生きてきました。
同じ対象を好きな人が受け入れられない(同担拒否)というわけではなく、同好の士とは大いに語り合いたい気持ちはあるのですが、いかんせん自分の好きなものを一般的な感じで好いていないような感じがして、それを指摘されたり、変に思われたり、相手を不快にさせるのが嫌だと思っていたからです。
 
ただただ、自分の好きなものを自分の好きなように愛でたい。そう考えていました。たとえひとりぼっちでも。
 
いわゆる隠れオタクです。(隠れられているかはわかりませんが)
はぐれオタクかもしれない。(そんな言葉はない)
 
この「一般的な感じ」というのは「普通に」「常識的に」みたいな一見するとゆるぎないことのようですが実際思い込みによるところが多いあやふやな概念です。
でも、私はあえてそこに照準を合わせることにしました。
なぜならそれが一番安全だと思ったから。
今までにやけ顔も隠さずにゆるみきった状態で絶対的に安全な場所で画面の向こうをただ見ていればよかったのですが、こちらも人の形をして目の前に立たなくてはなりません。
気持ち的には丸裸です。
自意識過剰なのもわかっています。でもせめて失礼のないように。不快にさせないようにふるまいたい。
ある程度人として当たり前のことですが、強迫的なレベルでそう思っていました。
せめて「普通」であろうと精一杯つとめたのですが、
 
実際、握手をすると予想もしなかった感情がわいてきました。
 
「嬉しい」「好き」「ありがとう」などポジティブなものが爆発的に増加するのはだいたい予想していたのですが、「苦しい」「むなしい」みたいなネガティブな感情も色濃く襲ってきたのを覚えています。
どちらも飲み込まれそうなほど大きな渦を巻きながら迫ってくるので、必死でポジティブな言葉を呪文のように唱えながら逃げたようなイメージ。
脳内物質がスプリンクラーのように降り注ぐ!!!!!!!
舞い上がったかと思ったら次の瞬間叩き落されて、しにたい!でも幸せ!!!!!!!生きる!!!!!!!!!!みたいなアップダウンが秒単位で起こるような感覚。
 
握手(接触)って劇薬じゃないか。(情緒不安定じゃないか)
 
このとき、そばにフォロワーさんがいてくれなかったら私はその辺で行き倒れていたかもしれない。大都会の片隅で。(ありがとうございました)
 
本当に強烈な体験でした。
漠然と思ったのは「これは狂う」ということ。
 
また「ガチ恋」の話になりますが、行く前は別の人種のことのように思っていたのに、いざイベントを終えてみるとこれは他人事ではないと感じました。
そうです、人に向けてのガチ恋です。あんなに言っていたのに。
これは「むなしい」と感じたことに関係しています。
むなしいって何がむなしいのか。それはきっと「欲が出るから」だと思います。
 
ではなんの欲なのか。
自己顕示欲や、自己承認欲求と呼ばれるものです。自意識過剰が自己顕示欲を強め、承認欲求につながっていく。そしてまたぐるぐると悪循環するとどんどん苦しくなるらしいのですが、私ももきっちりそのループにハマったという訳です。
 
私の場合で言うと、
自意識過剰さから目立つことを恐れ、有象無象でありたかったはずなのに、接触イベントがきっかけで個人として認めてほしいと思う気持ちがわき、
そうあれない自分に落ちこむ。
 
みたいな。
 
ものっすごい独り相撲ですね。全部自分の中でしか起こっていないことです。
それも自覚しているので気持ちを持て余して苦しい。
そもそも私は何をしにきたんだ。目的を一瞬見失いそうになり、慌てて捕まえて感情の波をやりすごしました。
そう、目的は「認められること」じゃなかった。感謝を伝えることは達成できた。いいんだこれで。いいんだ。と、自分に言い聞かせて。
イベントが終わったあと、制作陣のお一人から「会場にいらしたんですね。どこにいらしたのかわかりませんでした」という内容のリプ返をいただいたのですがそれでいいんです!見つからなくてよかったと心底安堵を感じつつも少し寂しかったのもこのせいだと思います。
立ち位置なんて簡単に見失ってしまうものですね。
私は幸か不幸かまだ一度きりですが、巷では若手俳優やアイドルの握手会なんかは頻繁に開催されている模様なのでより深い「ガチ恋」状態に陥るのは難しくないと思います。
 
それが自分の感覚とつなぎ合わせてわかったのが、私の人生において大きな収穫でした。
 
もちろんガチ恋が苦しいつらいばかりではなく、それを楽しむ人もいるのかもしれませんが、このブログを書くきっかけになったのが以前RTした「りさ子のガチ恋♡俳優沼」(クリックするとあらすじに飛びます)という舞台の感想を書いたエントリーだったのでこのような内容となりました。
 
 
恋は楽しいばかりじゃない。そう思うのです。(笑っていいんです大丈夫です)
 
 
次は、承認欲求のくだりとかそのへんも絡めつつ、ほかに学んだことや、これからについて書こうと思います。