『女の数だけ武器がある。 たたかえ! ブス魂』ペヤンヌマキ著 感想

「この人と友だちになりたい」
 
と、読み進めるにつれて強く思ってしまったのです。私は。
友だちだなんて、大人になってから定義がわからなくなってしまって、子供のころの気軽さでそう呼べる人をつくるのは案外難しくなってしまって。
なんとなく安全な関係に腰を据えて新しい関係に手を出すこともめっきり減ってしまったこの頃に。
 
「友だちになりたい」
 
だなんてちょっと我ながら年甲斐もなくて笑ってしまったんですけど。
読んでいて、一緒にお酒でも飲みながら古くからの友人と近況報告をしあっているかのような錯覚に陥ったからかもしれません。
ペヤンヌさんは女性でありながらAV監督という割と珍しい経歴を持った方です。
奇抜ともとれるその職業に就くに到った経緯から、もっとさかのぼって幼少期からの生い立ち、ここ最近感じていることなどこの一冊でペヤンヌさんのことをだいたい知った気になれちゃったりして。
 
読書とは作者との対話だって昔何かで読みました。
小説でもきっとそうだし、エッセイならなおさら直接的に感じます。
 
そのうえ、わかる~~~とか、いいね~!とか、マジで!?wwwって何度もなるんですもん。
 
そりゃ好きになっちゃいますよね。
「友だちになりたい」って好きってことですよね。
 
数々のエピソードの面白さはもちろんなんですけど、それは文章全体からにじむペヤンヌさんの優しくてまっすぐで、ちょっと変わった?人柄がとっても大事で。
読みながらきっと、私は百面相をしていたのだろうと思います。
 
特に私的に「ブフッwww」となったところは、
「わるものメモ」「元彼の前で芸人化」のお話。
 
とても好きなので皆さん読んでいただきたい。
ペヤンヌさんはご自分のことをネガティブだと仰いますが、ちゃんとそこを認めて、かつそこを恨みつらみ妬みなどで終わらせずにネタに昇華できちゃうのがすごいなと。
毒を毒のままで終わらせないっていうか。
毒があるのは人間みんなそうだと思うんですが、それをため込んだりまき散らした結果自分までやられちゃってる人って多いと思うんですよね。
でもペヤンヌさんはそうじゃなくて、それをもとに今の「ブス会」の舞台をつくられたり、こうしたエッセイだったり書かれてて。
それってすごく大切なことなんだと思うんです。気づけない人、気づいても何もアクションが取れない人、アクションがネガティブ循環しちゃう人など色々いる中で、創作活動のエネルギーにできるってなんて生産的!って思いますし、生き方自分で見つけてるんだな~って尊敬の念を抱きます。
 
生き方。私今アラサーなんですけど。
この年になってくると本当に「生きるってなんだろう」って毎日のように考えますよね。
将来の展望や確固たる目標もないまま、日々とりあえずがむしゃらに生きていて、へとへとに疲れた頭でこれって誰のための人生だろうって空虚な気持ちに襲われたり。します。しませんか?私はするんです。
やりたいことはたくさんあっても、目まぐるしく過ぎ去る出来事に対応するので精一杯。
いつのまにここに来たんだろう?このままどこへ行くんだろう??
 
鏡を覗いて、あれっ、私こんなに… !?えっ、
 
っていう不安。
 
見事なクライシスです。
「加齢は恐怖」とこの本には書いてあって。まったくもってその通りだよねって眉根を寄せて頷きました。
「ブスという言葉が恐怖だった」とも書いてありましたが、美醜の評価が他者からの評価に直結していると思い込んでいた若いころとは違い、抗えない衰えを弱りを、引き連れていく未来がさらに険しく暗い道に見えたり。
 
でもなんだろう、この本を読んでいるとちょっとほっとするというか。
ブスという言葉の恐怖を乗り越えてきたのと同じように次から次へと立ちはだかる「怖いもの」をひとつひとつ丁寧にほぐして、ちょっと日に当てたらなんかちょっと縮んだんじゃない?軽くなったんじゃない?なんだこんなものか~!みたいな過程がみえるので、これからもそうやってやっていこうよみたいな気持ちになれるんですよね。
あ、ほかにもこの「怖いもの」と戦ってる人がいたって、見えるのがとても心強いです。包み隠さずありがたいなって。
たたかえ!ってタイトルにもあるんですけど、「ハウツー本」というよりは「戦記」に近い。たたかいってただ激しく暴れるだけのものばかりじゃないんだなって気づかせてもらえます。
 
女性同士の会話ってあけすけで面白いとも書いてあって、そこには本当に同意しかないんですけど、楽しい会話ができる関係でもこういう怖いものの話を共有するのって難しいんですよね。
 
 
ほかにも色んなコンプレックスについての話もありつつ。
中でもやっぱり気になったのが「男性へ希望がもてなくなった」というお話です。
メンズ温泉の制作に携わっていらっしゃったあたりのツイートなどでうっすら感じてはいたのですが、やっぱりそうか、と。
そして以前私のブログエントリでもお話ししましたが、私もそうなんですよね。すごく感覚として似てる。
 
なのでもう、
わかる~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!
って叫びながら走りたくなりました。
 
 
ちょっと待ってくださいね。
本当に酔ってるみたいなテンションになってきました。(素面)
まあいいか、バーチャル飲み会みたいなものですね。(?)
 
この部分で、だから私はあの番組を好きになることができたんだって、解が示された気がしました。
どうしても女性の心にひっかかってしまう小骨みたいな要素を丹念に取り除く匠のお仕事が、あの番組ではされていたんだなって。
それはきっとペヤンヌさんだけではなくほかの制作陣の方々にもあった認識なんだとは思うんですが、それがされている番組ってなかなかないんですよね…!!
もちろん素材のよさとか、盛り付けも大事なんですけど!!いつものあなたのお気に入りの調味料ドバドバかければいいってわけじゃないんだよっていう。
もっと根本的な部分の、生きているだけで感じる、人に言ったら「じゃあ食べなきゃいいでしょう」とか「ちょっと避ければいいんじゃない」「気にしすぎ」なんて言われるところまで気を使って取り除いてそのうえおいしく食べさせてくれるなんてなかなかないんですよ。
 
感覚の部分でのリンクがあったんだなって。
 
すごくスッ…って腑に落ちて爽快でした。
 
 
 
あと感じたのは、ペヤンヌさんって真面目な方だなあということ。サービス精神旺盛で、ユーモアのある方だけど、とっても誠実。
それ故の面白さもたっぷり感じます。真面目な人が真面目にしてるのって時折ある種の滑稽さが生まれるんですよね。本人の意図しないところで。それが私は結構好きなんです。
全体を通して、AVとかセックスとか、MとかSとか●●だとか△△がとか(笑)
ちょっと復唱もためらわれるような過激な表現も多いのになんだか文章全体に流れている空気はおっとりと優しく、丁寧に選ばれた言葉でできていると感じました。
文庫版で追加された、友人の雨宮まみさんへの言葉は、胸に深く刺さりこみます。
 
そんなペヤンヌさんがつくる舞台を、今まで残念ながら拝見したことはないのですが、いつか絶対に観に行きたい…!!と思っています。
 
(最新の舞台「男女逆転版・痴人の愛」は2017年12月8日~19日上演!)
 
 
 
頑張っていこうね!私たちまた明日からまだまだ人生長いらしいけど!!お互い頑張ろうね!!!!!また会おうね!!!!!
って熱いハグして別れるような読後感です。
 
 
とまあここまで書いてきて、完全に友だちと飲み会したみたいな気持ちになれたので私は満足です!!(どういう〆)